ホールインワンに寄せて         
                                                    湯田孝次

 2003年(平成15年11月7日)那須黒羽GCアウト7番ホール(125ヤード、パー3)において悲願のホールインワン事件が予告も無しに突然に起きた。
 バブル経済が終焉し深刻な不況が長引く昨今、私自身は5年前に事業を廃業に追い込まれ、多額の借金、差押、競売、家庭崩壊、離婚と、人生の崖っぷちに立たされていた。しかも多くの大切な連帯保証人が居たため破産も自殺もできない有様。本当に逃げ場が無かった。連日に及ぶ借金催促。特に日榮、商工ファンドの国会まで問題となった強烈な催促、毎日が地獄の連日、ほんとうに辛かった4412664b.jpg
 再生は息子を含め高校生6人を集い、受験指導をしながら教室での生活を開始。私自身は商法、民法、物件法を中心に法律の勉強を、生徒たちは全員、授業料の安い国公立大学のみを。債務は一歩も退くことをせず調停、和解、もっとも崖っぷちだったので下がれなかっただけなのだが、粘り強く一件づつ勝ち取っていった。2年前、生徒たちは全員、国立大学を現役で突破。「今度は親父の番だ」「今度は先生の番だ」と励まされ、新たな勇気と希望は息子と生徒達が贈ってくれた。苦難の自己体験は経営不振、債務超過、資金繰りの悪化で悩む中小企業経営者への相談に役立ち始め、その件数も同時に増えていった。この年7件をこなしてしまっていた。年末には新会社設立に参与。ここで良き仲間を得て、ますます元気が出始めた。
 そして今年、元の事業拠点に戻り、妻も戻ってきて、家族がまとまり、心身が潤い始めた矢先でのホールインワン。「オイ、オイちょっとまだ早いよ、まだ自分を祝う時期じゃない」と困惑してしまった。そして、それは大きな悩みとなってしまった。長いこと苦しむことに慣れてしまっていたため喜びや幸せは、まだ似合わない。ホールアウト後クラブハウスで三沢支配人が満面の笑みで祝福してくれた。その笑みは妙に説得力があった。「素直に今の自分を褒めてあげよう」と決めるのに時間はいらなかった。そして「ゴルフをやっていて良かった。」と帰路しみじみと感じ入ってしまったものだった。
 記念コンペは2週間後、人生を重ね合った、もしくは重ね合うであろう人達を中心に声をかけ、私にとっては財産とも言える30余人の大切な人達だけで、小さな幸せを大いに分かち合った。そして心の中に「凄い人になっていこう」と深く刻み込んだ。私の言う「凄い人」とは、どんな苦境に逢っても堪え忍ぶネバーギブアップな人です。「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」の精神です。(笑え)
 ホールインワンは私から過去の全てのマイナス要因を解放させ、未来に希望と復活を確信させる出来事だった。幸せすぎて涙も禁じ得ず。ゴルフの神様に感謝です。そして仲間達にも。嬉しい限りです。これを機にもっと、もっと元気になって、もっと、もっと豊かな人生が送れて、そして、そんなパワーを皆と分かち合えるようますます頑張ります。
  当日は私のわがままにつきあって頂いて、本当にありがとうございました。